「配属先の部署で、先輩や上司が『予算』について話しているけど、何のことかサッパリ…」
「予算達成って、そんなに大事なことなの?」
会社で働き始めると、必ずと言っていいほど耳にする「予算」という言葉。実はこれ、会社の未来を左右するとても重要なものなんです。多くの企業にとって、予算は経営の根幹をなす要素です。
この記事では、新入社員の皆さんが「予算」の基本をゼロから理解できるよう、会社の基本的なお金の流れから、予算が達成・未達成だった場合の影響まで、分かりやすく解説します。
この記事を読めば、会社の数字に強くなり、自分の仕事がどう会社に貢献しているのかが見えてくるはずです!
予算は会社の「未来の計画書」

会社の「予算」とは、一言でいうと「会社が未来の目標を達成するための、具体的な計画書」です。
多くの企業は、1年間の活動を始める前に「どれくらいの売上を立てて(収入)」「何にお金を使って(支出)」「最終的にどれくらいの利益を出すか(儲け)」という詳細な計画を立てます。この計画こそが「予算」なのです。
これは、旅行の計画に似ています。「ハワイ旅行に行くぞ!」と決めたら、まず「旅費は30万円(予算)で、航空券に10万円、ホテルに8万円、食事やお土産に12万円使おう」と計画を立てますよね。
会社も同じように、年間の目標(利益)を達成するために、売上目標や経費の上限などを細かく設定します。予算は、会社という船が目的地(目標達成)に向かうための、大切な「航海図」の役割を果たしているのです。
なぜ予算が重要?会社経営における3つの役割
では、なぜ予算はそれほど重要なのでしょうか。それには大きく3つの役割があります。
目標設定(会社のゴールを示す)
予算は、全社員が向かうべき共通のゴールを示します。「今期は売上〇〇円、利益△△円を目指すぞ!」という旗印があることで、社員一人ひとりが同じ方向を向いて力を合わせることができます。
資源配分(お金や人の使い方を決める)
会社が使えるお金や人材(資源)は無限ではありません。予算を立てることで、「この事業に重点的に投資しよう」「広告宣伝にはこれくらいお金を使おう」といったように、限られた資源をどこに、どれくらい配分するかを決める指針になります。
進捗管理(計画通りかチェックする)
立てた予算に対して、実績がどうなっているか(予実管理)を定期的にチェックします。これにより、「計画通り進んでいるね!」「ちょっと遅れているから、対策を考えよう」と、会社の健康状態を常に把握し、問題があればすぐに対応することができます。
会社の数字に強くなる!予算を構成する必須キーワード5選

予算を理解するためには、会社の基本的なお金の流れを知る必要があります。ここでは、最低限覚えておきたい「5つのキーワード」を、身近なカフェの経営を例に見ていきましょう。
①売上:会社に入ってくるお金
「売上(うりあげ)」とは、商品やサービスを提供することで会社に入ってくるお金の総額です。これが会社のすべての活動の源泉となります。
- 例: カフェが1杯500円のコーヒーを100杯売ったら、その日の売上は「500円 × 100杯 = 50,000円」となります。この売上を最大化することが、多くの企業の目標です。
②原価:商品やサービスを提供するためにかかるお金
「原価(げんか)」とは、売れた商品やサービスを直接提供するためにかかった費用のことです。「売上原価」とも呼ばれます。
- 例: 1杯500円のコーヒーを作るのに、コーヒー豆や牛乳、砂糖、カップ代で150円かかった場合、この150円が原価です。原価を抑えることも、利益を増やす上で重要です。
③粗利(売上総利益):会社の儲けの第一歩
「粗利(あらり)」は、売上から原価を差し引いた、ビジネスの基本的な儲けのことです。会計用語では「売上総利益」と言います。この粗利が大きければ大きいほど、儲ける力が強いビジネスだと言えます。
粗利の計算式:売上 ー 原価 = 粗利
- 例: 1杯500円のコーヒー(売上)の原価が150円だった場合、粗利は「500円 – 150円 = 350円」となります。この粗利から、後述の販管費を支払います。
④販管費(販売費及び一般管理費):会社を運営するためのお金
「販管費(はんかんひ)」とは、商品を売るための活動や、会社全体を管理・運営するためにかかる費用のことです。原価以外のほとんどの経費がここに含まれます。
費用の種類 | 具体例 |
販売費 | 広告宣伝費、販売スタッフの給料、営業交通費 |
一般管理費 | オフィスの家賃、水道光熱費、管理部門の社員の給料 |
- 例: カフェの店舗家賃、スタッフの人件費、レジのリース代、チラシなどの広告費が販管費にあたります。
⑤営業利益:本業での最終的な儲け
「営業利益(えいぎょうりえき)」とは、会社が本業で稼いだ最終的な利益です。粗利から販管費を差し引いて計算します。この営業利益がプラス(黒字)であることが、企業活動の大きな目標となります。
営業利益の計算式:粗利 ー 販管費 = 営業利益
- 例: 1ヶ月の粗利が100万円で、家賃や人件費などの販管費が70万円だった場合、営業利益は「100万円 – 70万円 = 30万円」の黒字となります。
「黒字」と「赤字」はどう決まる?会社の成績表を読み解く

ニュースなどで「今期は黒字転換」「赤字拡大」といった言葉を聞いたことはありませんか?これは、会社の経営状態を示す重要な指標であり、営業利益の結果によって決まります。
会社の目標は「黒字」を出すこと
「黒字」とは、会社の収入が支出を上回っている状態、つまり利益が出ている状態のことです。先ほどの計算で「営業利益」がプラスになっていれば「黒字」です。
会社はボランティアではありません。事業を継続し、成長していくためには、利益を生み出し続ける必要があります。だからこそ、すべての企業は「黒字経営」を目標に掲げているのです。
なぜ「赤字」は避けなければいけないのか?
一方、「赤字」とは、会社の支出が収入を上回っている状態、つまり損失が出ている状態を指します。「営業利益」がマイナスの場合がこれにあたります。
一時的な赤字ならまだしも、赤字が続いてしまうと、以下のような深刻な問題が発生します。
- 資金不足: 従業員への給料や取引先への支払いができなくなる。
- 事業の縮小: 新しい商品開発や設備投資ができなくなり、会社の成長が止まる。
- 倒産のリスク: 最終的には会社の存続が危うくなる。
赤字は、会社の体力をどんどん奪っていく危険なサインなのです。
予算の達成・未達成で何が変わる?会社と社員への影響

では、年間の目標である「予算」を達成できた場合と、できなかった場合では、会社や社員にどのような影響があるのでしょうか。
予算を達成したらどうなる?(黒字の場合)
予算を達成し、計画通り(またはそれ以上)の黒字を確保できた場合、会社にとっても社員にとっても多くのメリットがあります。
会社への影響:成長投資や事業拡大が可能に
- 新規事業への挑戦: 新しい分野に進出するための資金が生まれる。
- 設備投資: 最新の機械を導入したり、より快適なオフィス環境を整えたりできる。
- 人材採用: 新しい仲間を増やし、組織を強化できる。
- 株主への還元: 配当金を増やし、投資家からの信頼を得られる。
計画的に利益を出すことで、会社はさらに成長するためのポジティブなサイクルを生み出すことができます。
社員への影響:ボーナスや昇給への反映
- ボーナス(賞与)の増額: 会社の利益は、社員の頑張りの成果。多くの企業では、業績に応じてボーナスの額が決まります。
- 昇給(ベースアップ): 会社の体力がつけば、社員の基本給を上げることも可能になります。
- キャリアアップの機会: 事業が拡大すれば、新しいポストや役割が生まれ、昇進のチャンスも増えます。
予算を達成しないとどうなる?(赤字の場合)
反対に、予算を達成できず、計画よりも利益が少なかったり、赤字に陥ったりした場合はどうなるでしょうか。
会社への影響:事業の縮小や見直し
- 経費削減: 広告費や出張費、交際費などのコストカットが求められる。
- 不採算事業からの撤退: 利益が出ていない事業部を縮小したり、場合によっては閉じたりする必要が出てくる。
- 新規採用の抑制: 新しい人材の採用を見送る、または凍結する。
- リストラ(人員整理): 最悪の場合、従業員の解雇という厳しい判断を迫られることもある。
社員への影響:評価や待遇へのインパクト
- ボーナスの減額・カット: 会社の利益がなければ、社員に還元する原資もなくなってしまいます。
- 昇給の見送り: 給料が上がらない、または下がる可能性もある。
- 厳しい評価: 予算未達成の原因を追求され、個人の評価にも影響が出ることがある。
このように、予算の達成・未達成は、会社全体の未来だけでなく、私たち社員一人ひとりの働きがいや生活に直結する、非常に重要な問題なのです。
新入社員が今日からできる!予算を意識した働き方

「予算の重要性はわかったけど、新入社員の自分に何ができるの?」と思いますよね。大丈夫です。日々の仕事の中で少し意識を変えるだけで、あなたも予算達成に貢献できます。
自分の仕事と「売上」「原価」の関係を考える
まずは、自分の仕事が会社の数字(特に売上と原価)にどう繋がっているのかを考えてみましょう。
- 営業職なら: 自分の目標数字が、部署や会社全体の「売上」に直結していることがわかります。
- 開発・製造職なら: より効率的な作り方を工夫することで「原価」を下げ、会社の「粗利」を増やすことに貢献できます。
- 管理部門(総務・経理など)なら: コピー用紙の無駄をなくしたり、電気をこまめに消したりすることで「販管費」を抑えることができます。
自分の仕事が、会社のどの数字に影響を与えるのか。この視点を持つだけで、仕事へのモチベーションも大きく変わるはずです。
先輩や上司に予算に関する質問をしてみよう
わからないことは、一人で抱え込まずに先輩や上司に聞いてみましょう。最初は勇気がいるかもしれませんが、意欲的な姿勢は必ず評価されます。
質問の例:
「〇〇さん、今期の部署の予算目標ってどうなっていますか?」
「私のこの業務は、売上とコストのどちらに影響が大きいですか?」
「予算達成のために、私が意識すべきことはありますか?」
こうした質問を通じて、あなたは部署の一員として、より主体的に仕事に取り組むことができます。
会社の数字や予算について理解を深めることは、あなたがビジネスパーソンとして成長するための第一歩です。ぜひ今日から、自分の仕事と会社の「お金の流れ」を意識してみてください。
まとめ:予算を理解すれば、あなたの仕事はもっと強くなる

- 予算は会社の未来を描く「航海図」。売上・原価・粗利・販管費・営業利益という基礎を押さえるだけで、数字に強いビジネスパーソンになれます。
- 予算の3つの役割(目標設定・資源配分・進捗管理)を意識すると、日々の業務の優先順位と行動が明確になります。
- 黒字は投資・採用・報酬へ、赤字はコスト削減・採用抑制・評価影響へと直結。あなたの一つ一つの行動が組織の結果を左右します。
次にやること
- 自分の業務が「売上」と「原価」にどう効いているかを言語化する
- 部署の予実(予算対実績)を月次でチェックする
- 小さな改善(無駄なコストの削減・単価/数量の引き上げ施策)を一つ始める
予算を“自分ごと”にできる新人は伸びます。今日から数字で語れる土台を作り、配属先での信頼を早期に勝ち取りましょう。